幸せになるためにはどうしたら良いでしょう?
今回は、幸せになるためのポイントとして自尊感情というものをご紹介したいと思います。
幸せになる方法、といえば
「幸せであると思う」、ということが結論なのですが(これ、真理なんです)、
それだけではあまりに抽象的すぎるので、もう少し具体的に考えますと
「自分を愛する、好きになる」ということは必須だと思います。
これが欠落してしまうと、
何をしても満足感が得られなかったり、常に不安感があったり、
自尊心を得られるような行動に執着したりしてしまいます。
自分で自分を好きになれないということは、
世界の土台が常に揺らいでいることであり、不足感や不安と常に戦わなければならなくなります。
自分を愛せなければ、他の人も物も、心の底から愛することが難しくなってしまうのです。
そして人によっては、依存する対象を探すような場合も出てきてしまいます。
この重大な問題を向き合ってみていくということは、
幸せをつかむという命題のみならず、
社会生活を快適に送ったり、心地よい友人関係を気づいたりするためにとても重要であり、
もっとも難しいパートナーとの向き合い方をさらに良い方向へ導いてくれます。
人間の不安や悩みは、突き詰めればそのほとんどが人間関係と言われます。
それを円滑にするためにも、この自尊感情、というものを知っておくのはとても意義のあることと言えるでしょう。
自分に自信の持てない方
幸せを感じにくい方
今の自分に不満のある方
すぐにイライラしてしまう方
こういった方にとって有益な情報になると思います。
また、子育て中の方にとっても、
子どもの中にある自尊感情を育てるヒントにもなります。
自尊感情がキチンと育てば、精神的にも社会的にも立派な大人になります。
ぜひ一読していってください。
自尊心とは、「ありのままの自己を尊重する」ことです。
自尊感情という言葉もありますが、おおざっぱに同じようなものと捉えても構いません。
この自尊感情(自尊心)も細かく分けることも出来ますし、その分け方もいくつかあります。
ここではなるべく分かり易い分類を選んでいこうと思います。
自尊感情を大きく2つに分けて考えてみましょう。
1つは「基本的自尊感情」。
もう1つが「社会的自尊感情」です。
それぞれ見ていきましょう。
①基本的自尊感情
自分自身のことを特に条件もなく愛する気持ちのこと。
多くの場合、親から愛情をたくさんもらうことで育つことが多い。
この基本的に自尊感情は人間の核になる部分であり、基本的自尊感情が満たされている人は自分自身を無条件に自信が持てる。また、他人のことも認められるようになる。
逆にこれが不足していると、常に不安感があったり、焦燥感や欲望を抑えるのが難しくなったりする。
②社会的自尊感情
その名の通り、社会を通して形成される自己肯定感のこと。
ようするに社会から認められていると自分が認識できるかどうか、ということです。
解りやすい例を挙げると、テストで高得点を摂ったり、高学歴だったり、社会的地位があったり、立派な肩書があったりといったことです。
別の言い方をすれば、他者との比較で得られる自尊感情、とも言えます。
社会的自尊感情の難しい点は、常に勝ち続けなければ高く保てないこと、他者との比較になるので相手を見下すようになってしまうこと、よほど自分を理解していないと自身ではコントロールできないことが多いというところです。
この2つがそれぞれ自分はどのくらい満たされているのか?
もちろん、測ることなど出来ませんが、
ある程度なら自分で推測することが出来るのではないでしょうか?
上の図は基本的自尊感情と社会的自尊感情を組み合わせた4つのパターンを2×2のマトリクスにしたものです。
見た目から・・・ではなく社会的自尊感情(Social Self Esteem)と基本的自尊感情(Basic Self Esteem)の頭文字をとって
そばセットなどと呼ばれるときもあります。
縦軸が基本的自尊感情を示し(絵でいえば土台となる四角形の部分が基本的自尊感情)、
横軸が社会的自尊感情(四角形の上に載っている丸っこい部分)を表しています。
少しだけ順にどういったものか見ていきます。
①基本的自尊感情・大、社会的自尊感情・大(右上)の人
人間の土台・基礎となる基本的自尊感情も社会的自尊感情も満たされている場合は、当然かもしれませんが社会的にも人間的にもうまく生きていくことがとても多いようです。
不必要な不安感もありませんし、社会的にも認められている(つまり社会の中である程度うまくいっている)ので友人もいることが考えられます。もっとも安定し、安心できる状態です。
特に問題はないと考えられますが、恵まれているからこそ、人の気持ちに鈍感になったり、常識・当たり前ということに囚われてしまうこともある(つまりイレギュラーを認められなかったり、TVや新聞の言うことを鵜呑みにしてしまう)ようです。
②基本的自尊感情・大、社会的自尊感情・小(左上)の人
土台である基本的自尊感情が満たされているので、道を外れたり、大きな不安感やイライラを持ったりはしないでしょう。
社会的自尊感情が満たされていないのは、本人の能力の問題であったり、適性の問題であったり様々考えられますが、人としても基礎が出来上がっていますのでへこたれたり大きく落ち込んだりはせず、マイペースながらもしっかりと自分の足で歩いて行けます。
基本的自尊感情は一度育ってしまえば、崩れることはなかなかないので、人に認められなくても頑張って生きていけます。
友人も多く、幸せに暮らすことができます。
なあなあになってしまったり、のんびりし過ぎてしまう面は出てくるかもしれませんし、社会的成功は難しいかもしれません(そもそも本人がそれを望んでいない場合も多い)。
③基本的自尊感情・小、社会的自尊感情・大(右下)の人
基本的自尊感情が満たされなかったため、社会的に認められることで自尊感情を高めている人がこれに当たります。
従って能力が高い人、ともいえるでしょう。
満たされない部分を埋めるため必死に社会的なものを求める面があり、だからこそいわゆる社会的成功をしている場合も多いタイプです。
しかし、社会的自尊感情は、自分でコントロールできない面があり、かつ、常に結果を残し続けることが資本主義社会では必要になってくるので不安定で他力本願な面のある自尊感情になってしまいます。
人によっては相手を蹴落としてでも・・・というタイプもいます。サイコパスもここに入ることが多いのではないでしょうか。
ぱっと見の見た目は普通か、あるいは良い場合が多いので分かりにくく、専門家でも最も気を付けなければならないタイプとする人もいます。
④基本的自尊感情・小、社会的自尊感情・小(左下)の人
このタイプの人は寂しさが常に付きまとったりしています。認められたり愛されたりしないとこういった状況になってしまうようです。
また、社会的にも人間関係が苦手だったり、興味のあることが社会的に(資本主義社会的に)認められないことだったりすると、自分を受け入れてもらえる場所を見つけられず苦しい思いをすることがあります。
引きこもりなどもこのパターンに当てはまることが多いようですが、引きこもりはある意味まだマシです。
この両方が満たされないタイプは犯罪者になる確率が最も多いのです。
不足を超えて飢餓状態になってしまうと、自分の存在価値すらも見失ってしまい、何かを得る為には手段を選ばなくなる可能性もあるからです。
このように、実は社会的自尊感情というものは、言ってみればあくまでプラスアルファであり、
本質的には基本的自尊感情を積み上げていくことが大きなポイントになってきます。
社会的自尊感情はどうしても他者との比較、という視点が出来てしまい、結果として不幸の出発点になってしまうことも考えられるのです。
神のような完璧な存在でない限り、得手不得手は誰にでもあり、どんな人であっても他者より劣る部分は存在するのですから。
※余談ですが数学でこの世に完璧・絶対はないと証明されています
完璧・パーフェクトを目指すな、というわけではありませんが、
「足るを知る」ことも大切だということでしょう。
ではどうしたら基本的自尊感情を高めることが出来るのでしょう?
先ほども書いた通り、根本的には親からの無条件の愛がとても重要になってきます。
無条件で愛された人は、無条件で自分を愛することが出来るようになるのです。
ただ、外的状況がそれを許さない場合もあります。
例えば何らかの理由で両親とも他界してしまっていたり、そうでなくとも疾病で苦しんでいたり、
あるいは親が基本的自尊感情が満たされておらず、それを子供に伝える術を知らない場合などです。
親からの無条件の愛情というものが基本ではありますが、このような状況下においては、それが望めません。
その際は、他の大人から同様、あるいは近しい愛情をもらえれば、本当の親でなくとも基本的自尊感情はしっかり育ちます。
そもそも子どもたちを育てるのに親だけですべてをカバーするのは非常に困難であり、周りの大人が協力することによって、より基本的自尊感情が育っていきます。
しかししかし、昨今耳にするネグレクト(育児放棄)やヤングケアラー(子どもが身の回りの世話や介護を行う状況)などは、
周りの大人が介入したり気づいたりするのが難しいことも多々あります。
そして、子どもは上記のように愛情を与えられることによって回復していきますが、
ネグレクトされた子やヤングケアラーが愛情が不足したままに大人になった場合、基本的自尊感情が育たないまま大人になってしまうわけです。
そういった大人は、幸せを感じることがなかなかできず、引きこもりになったり、あるいは社会的自尊感情を得ようと不安定なまま突っ走ってしまいます。そして挫折してしまえば、犯罪に手を染めるしかなくなる・・・
そんな可能性も考えられるのです。
子どもに愛情を与えるには、あるいは愛情が不足したまま大人になってしまった人がそれを満たすにはどうしたら良いのか
そのヒントになる1つが「共有体験」です。
共有体験とは、
共に同じ体験をすることで、同じような気持ちを分かち合うことです。
もちろん、1人1人感じ方は違うのでまったく同じ感想である必要などありません。
しかし、同じ体験・・・共有体験をすることで、心が近づくのは間違いありません。
私は常々、子どもの教育にとって重要なのは、「幸せな思い出」だと言ってきました。
この幸せな思い出とは、例えば親と一緒に釣りに言っただとか、一緒にうどんを打っただとか、共に楽しんだ体験のことです。
それは海外旅行だとか豪華な食事だとかお金をかける必要はありません。
子どもにとって幸せに感じられることが大切であり、それがたとえ野原で一緒に花を摘んだということでも100点なのです。
その思い出・共有体験が子どもの人生を地面の下でしっかり支える根っこになるのです。
話が少しそれますが、
米国では職を失った人や自尊感情を低い人などを対象に軍隊に入隊させる仕組みを作っています(詳しくはいずれ当ブログでも書いてみたいと思います)。
そういった軍隊に入隊させられた人たちは、満たされない思いや心に傷を負っています。
そうでなくとも軍隊は厳しいので、除隊する人も後を絶ちません。
しかし、軍隊を辞めた人の何割かは、また軍隊に戻りたい、と言うそうです。
それは何故か?
自信を失い、人生に不安を持っている人にとって、軍隊での共有体験はとても大きなものになります。
辛く、苦しい体験ではありますが、共に同じことを味わった仲間を求めてしまうのです。
軍隊はかなりストレスフルな環境だと聞きますが、それでもそういう場所に戻りたくなるくらい、共有体験は繋がりを感じるのです。
辛い体験ですら戻りたい、と考えるくらい共有体験とは影響を与えます。
その共有体験が幸せで楽しい体験なら、それがその人にとっていかに大きな財産になるかは充分に理解できるでしょう。
基本的自尊感情が育つ前に大人になってしまった人にも、この共有体験は効果があります。
出来るだけ信用できる人と、楽しい時間を共に過ごすことで、少しずつではありますが基本的自尊感情は育っていきます。
では最後にまとめてみます。
人の心の中には
①基本的自尊感情
②社会的自尊感情
の2つがある。
①は愛情や安心を積み上げることによって満たされていく
②は他者からの評価に依存する部分があるので、追いかけ過ぎると逆に辛くなる
この2つの感情を元に、
4つのタイプに分けられる。
①基本的自尊感情・大、社会的自尊感情・大
②基本的自尊感情・大、社会的自尊感情・小
③基本的自尊感情・小、社会的自尊感情・大
④基本的自尊感情・小、社会的自尊感情・小
①の人は心配不要。驕りや自惚れには気を付けよう
②の人も問題なし。周りとの軋轢には注意
③の人は不安定ながらも自分を保っている。自己中心的な思考になりがちなので気を付けよう
④の人は共有体験などを通して自尊感情を高めていくと、生きていくのが少しずつ楽になっていく。
この際、自分がいったいどこに当てはまるのかを自身で認識しておくことが大切です。
ここで見栄を張ってしまう人は③に該当する可能性が高いでしょう
基本的自尊感情を高める他の方法として、共有体験のほかに
安心できる場所を作る、というものもあります。
自分の存在が脅かされない、落ち着けて心許せる場所を作ることによって、
自分が生きていても良いと思える力が蓄えられていきます。
そういった場所を個人で作ってももちろんよいですが、可能ならどなたかに協力してもらえればより効果は上がるでしょう。
以上、長くなりましたが自尊感情についてご紹介しました。
最後になりますが、自尊感情に関しましては東海大学教授の近藤卓氏が非常に良い本を書かれています。
興味を持たれた方やもっと詳しく知りたい、子育てに使って自尊感情をしっかり持った人に育ってほしい、という方はぜひご一読ください。
近藤卓氏・著作おすすめ
⇒ありのままの自分:大人の自己肯定感を育てる
⇒子どもの自尊感情をどう育てるか
⇒自尊感情と共有体験の心理学(こちらはちょっと専門書になります)