今年に入り国会に提出された「種苗法改正案」。
某女優がツイッターで言及したことにより一時期話題になったりしましたが、「種苗の知的財産権の強化」という面が強調されてからはあまり見かけなくなりました(それにより女優もだいぶ叩かれたようです)。
しかし、本当に問題はないのでしょうか?
現代はツイッターなどのフェイスブックにもいわゆる工作員が多数入り込んでおり、真実の情報は気を付けなければなかなか手に入れられません。
今回は注意しつつ、「種苗法改正案」について見ていこうと思います。
まず簡単に種苗法及び改正案についてまとめてみました。
✅種苗法とは種(品種)の特許のこと(品種登録制度と指定種苗制度の二つの制度)
✅この特許権利期間はおおむね25年~30年
✅現状では国際法で「他国から持ち込んだ種」を登録することが出来るようになっている。つまり特許権者の利益が損なわれるような状況になっている
✅改正案では、この特許を強化し、(特定の品種の)自家増殖を禁止するようにする
例:コシヒカリ、あまおう(苺)、クイックスイート(さつまいも)、ミニティアラコーラルピンク(花)など
✅同じような法律はアメリカ、ヨーロッパでも施行されている
非常にざっくりまとめると上記のようなものになります。
ちなみに過去の流出(苗木などが海外で品種登録されてしまった)例としては
ブドウのシャインマスカットが中国で
イチゴのスカイベリーなどが中国や韓国に流出してしまい、登録賢者の利益が損なわれてしまったことがあります。
これらの現状を見る限り、新しい品種を作り出そうとしている人の利益が正しく守られていないことは明らかです。
こういった人たちを守ろうとするのは、決して悪い事ではありません。むしろ新しい品種を開発した育成者の権利は積極的に保護するべきです。
つまり農家の知的財産権を保護しよう、というものなのです。
(ちなみに現在育成権者に効力が及ぶ種類は387種で農水省は今後毎年増やしていく予定だという)
これまで「植物の新品種の保護に関する国際条約」(UPOV条約)などでも育成権者は守られてきたのですが、今回さらにそれを強化しようというのです。
この点を見逃し、表面的な問題だけを指摘した某女優はボコボコ叩かれたわけなのでしょう。
まぁ芸能人ですから、人気稼ぎが目的か、企業などから来た案件で発言することも多い訳ですが・・・
ではもう少し突っ込んで見てみましょう。
種苗法改正案の良い面は先ほど見ました。
この良い面を強調されて多くの人が黙ったわけですが・・・
では次に問題だとされている点をあげてみましょう
✅原則自家採種は禁止だと誤解される恐れがある
✅稲(米)という日本人の主食も自家採種が禁止になる
✅これに対して何の特例も用意されていない
✅一部大企業の利益だけが優先されている
まず自家採種は全く禁止だと思われてしまうことである。実際、農水省などにもそういった問い合わせはあったようである。
しかし、実際は品種登録されている固定種だけが禁止になるのである。またF1種も次世代はまったく別物になるので禁止対象外だ。
どの品種が禁止でどれが禁止でないのかを把握するのは大変だし、今後も毎年増やしていくのが農水省の方針なのだから去年は合法でも今年は違法という物も当然出てくる。
結果として農家に「自家採種」という技術や考えが無くなってしまうのは、文化の大いなる損失になる可能性がある。
また稲が何の特例もなく禁止品種になってしまうことも問題だ。
知的財産権先進国のアメリカや環境先進国のヨーロッパを見てみると違いが明白である。
アメリカの主食と言える小麦は自家増殖原則禁止になっておらず、自家採種は認められています。ヨーロッパでは自家増殖は原則禁止ではあるものの、特例で主要農産物(穀物、牧草、イモ類など21種)は補償金を支払うことで自家増殖が認められています。さらに耕作面積が15ヘクタール未満の農業者にはこの補償金の支払いも免除となっています。
このままでは、稲は「買う」という選択肢しか残らないことになります。
そしてこれらでまとめて利益を受けるのが一部企業です。
日本種苗協会(国内の種苗メーカーや小売店1000社以上で形成される団体)も、農水省と一緒になってこの法案には賛成している。メーカーや小売り側からすれば、種や苗が毎年確実に売れるならそれに越したことはないだろう。何だかんだ言って日本は世界第5位の農業大国である。
もちろん、育成賢者の利益は守られなければならないが、諸外国などへの流出は現状でも無断・違法で行われていることにも目を向けなければならない。海外(主に中国)での違法な自家増殖は法律だけの問題ではないと言える。
大企業の為の政策・・・・そう言えるのはこの種苗法改正によるものだけではありません。
2015年 ネオニコチノイド系農薬規制緩和
2017年 農業競争力強化支援法制定
2017年 グリホサート残留基準値緩和
2018年 種子法廃止
2019年 ゲノム編集食品流通開始
(2020年 種苗法改正案国会提出)
これは近年、農業関係で行われた法改正です。
ネオニコチノイド系農薬は主にグリホサートのことで、この農薬は悪名高いバイエル(旧モンサント)の商品です。
グリホサートは枯葉剤とほぼ同じ成分でヨーロッパ各国では次々に規制が強化されているものです。ヨーロッパでは使用不可の農薬を、日本では面積当たり世界一の輸入量を誇っています。2017年には残留基準値まで緩くなってしまっています。
同じ2017年に制定された農業競争力強化支援法は「試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間企業への提供を促進すること」とあります。ぶっちゃけて言うと、日本の種苗の知識や技術を海外企業に提供しなさい、というものです。
2018年の種子法廃止で国は稲の種苗の生産者にお金を出すのを止めました。
2019年ではまた人体にどういう影響があるのかハッキリわかっていないゲノム編集食品を流通を許可。
もちろん、これで得をするのは海外の国際的企業です。
このような流れも踏まえて考えたとき、種苗法改正案は本当に日本の農家の為になるといえるでしょうか・・・?
※グリホサートについてはこちらの記事をご覧ください
⇒食品の農薬事情 パンからグリホサート検出
繰り返しになりますが、育成賢者の利益を守るため、法整備は行うべきでしょう。
それに関しては異論はありません。
しかし、それにかこつけて農家の技術や可能性を摘むようなことは避けてほしいものです。
また日本人の食卓の安全を考えたとき、現状の農水省の行っている流れは決して歓迎出来るものでもありません。
推測にはなりますが、この種苗法改正案は、
遺伝子組み換え作物の全面的認可への布石のように見えます。(遺伝子組み換え作物は様々な実験で悪影響があることが確認されています。ただしバイエルなどはそれらの実験を認めていない)
種を技術的にも法律的にも自家採種出来なくなり、買うことだけが種や苗を得る方法になってしまえば、遺伝子組み換えが入ってきたとき、止めようがなくなります。
1人1人が声をあげたり、消費という投票行動で意見を表していくことが大切なのではないでしょうか?
ぜひ皆さまも考えてみてください