子どもが飛躍的に伸びる奇跡の授業 子どもの成績が上がる理由とは


戦後間もないころ、ある公立高校で、前例のない授業が行われました。
当時、決して進学校でなかった学校は、その授業を受けた3代目が卒業するころには「東大合格者日本一」になっていました。
その授業とは”スロウ・リーディング”
時代の流れがますます早くなる現状では、逆行とも言える授業にこそ「本当の成長」が隠されていたのです。
今回は”奇跡の授業”から、そのエッセンスを抽出していきたいと思います。

 

 

子どもが飛躍的に伸びる奇跡の授業 成績が上がる理由とは!?

奇跡の授業を考え出し、行ったのは、明治45年生まれ旧制灘中学校の国語教師・橋本武ことエチ先生である。エチ先生が就任した旧制灘中学校は現在こそ名門学校として有名であるが、当時は公立校のスベリ止め程度の評価の学校であった(その頃は一般に私立は格下だった)。「エチ先生」というあだ名は生徒に付けられたもの。昭和9年頃、エチオピア皇太子の花嫁候補に日本の子爵の娘が候補に挙がり、話題になっていた(話自体は破談に)。このエチオピア皇太子となんとなく共通点がある・・・ということで付けられたあだ名だという。

エチ先生は勉強について次のように語る。
「国語は全ての教科の基本です。”学ぶ力”の背景なんですーーーー」
確かに、本人がその気になって勉強を始めると、成績が急上昇する子がいる。これを調べてみると「国語が出来る」あるいは「本が好き」という明らかな共通点があるという。
これは英語などの語学に限ったことではなく、数学であっても同様で問題読解能力や、そもそも数学自体が”表現方法の1つ”であることからも当然であると言える。

つまり言語(母国語)を深く習得することにより、頭脳を使うことの土台がしっかりしてくるということだ。
実際にエチ先生が行った授業とは”スロウ・リーディング”。中勘助著「銀の匙」を、なんと3年間かけて読み込む、という内容のものであった。

 

 

奇跡の授業の中身

スロウ・リーディング授業では、3年間で1冊の教科書しか使わない。「銀の匙」の文庫本1冊のみである。加えてノートも不要。代わりに使うのはエチ先生次作のプリントである。

「銀の匙」は著者中勘助の自伝的小説である。中勘助が自身の子どもの頃の体験を文にしており、その文章や語句も小学校をあがったばかりの子どもたちにはかなり難しいものだ。
エチ先生のプリントはそんな子どもたちの疑問や不安を、ピンポイントで解決するものになっている。銀の匙を読み解く手助けになり、また作品世界の美しさや奥行きをより深く感じさせ、時には横道へ誘うプリントになっている。かわいいイラストや図表、段組、コラムなど細部まで工夫と愛情が盛り込まれている。生徒たちは板書からも解放され、小説の世界に心置きなく没頭することができる。

このプリントを使いつつ、実際の授業では例えば「表題付け」などを行ったりする。
「表題付け」とは小説の各章に1人1人が自分で表題を付けていくというものだ。
もともと銀の匙は新聞連載の作品で、各章は数字だけで短く、文庫本で2ページごとに構成されている。
各人が自分で決めた題をプリントに書きこみ、各自が発表したり議論したりして、最終的にはクラスで1つの統一表題を決める。
個性を大事にし、ディスカッションしてみんなで共通のものを付ける。個人の中にも深く入り込み、それをみんなと擦り合わせることもできる。
こうして「銀の匙」の世界は、ゆっくりと生徒たちの心に浸み込んでいく・・・

 

 

真の知識を得るために

エチ先生

エチ先生は言います。
「すぐに役に立つことは、すぐに役に立たなくなります。そういうことを私は教えようとは思っていません。なんでもいい、少しでも興味をもったことから気持ちを起こしていって、どんどん自分で掘り下げてほしい。私の授業では生徒たちがそのヒントを見つけてくれればいい。だからこのプリントには正解を書いてほしいとは思いません。自分がその時、ほんとうに思ったことや言葉を残していけばいい。そうやって自分で見つけたことは、一生の財産になります。そのことは、いつか解りますからーーー」

 

現代はPC、インターネットが出てきて情報はほぼ無料でいくらでも手に入るようになりました。結果、”解ったつもり”になることも増えてきたようです。
しかし、熱しやすいものが冷めやすいように、知識も「すぐに役に立つものは、すぐに役に立たなくなる」とも言えるのではないでしょうか?
確かに毎日流れてくるニュースや動画は刺激的ではありますが、数日後には話題にもならないことは多々あります。金融(株など)の情報もこれに近いものがありますね。
反面、古典などと言われる名作や名曲は、時代を経ても多くの人の心を打ちます。この事実こそが、エチ先生の言葉の証明になっているのではないでしょうか

「1つの言葉の裏には広がりがあります。それを詳細に読み込んでいくと、歴史・文化・社会・伝統・・・いくらでも広がっていきます。速読などでは身に付かないその広がりをじっくりと生徒たちと楽しみたいと思ったのです。」
エチ先生の授業は横道にそれることに非常に多かったという。
しかし、それこそが子どもたちの興味を引き、新しい世界を見せ、教育の土台を作っていったのではないでしょうか・・・

 

 

人は興味を持ったものをよく覚え、深く身に付ける

今の学校教育に疑問を持っている人も少なくないでしょう(学校の先生はよくやっている人も多いと思います。システムが問題です)
シュタイナー教育(個人的には推奨)では、1つの教科だけを数か月続けて学びます。
自分の経験則からも、1日に何種類も勉強するより、集中的に同じ科目をやった方が遥かに覚えが良いのは間違いないようです。

”奇跡の授業”では、子どもたちが興味を持ったことに対しちょくちょく横道にそれていました。好奇心を大切にする、それが大きなポイントであることは間違いないようです。
しかし、大人はとかく自分の価値観の元で子どもの良い悪いを押し付けてしまいます。
ゲームはダメ、アニメはダメ、毎日宿題しなきゃダメ・・・・
興味を持ったものを否定され、興味のないことを押し付けられた人が、イキイキとすることができるでしょうか?

今回の内容は「奇跡の教室(伊藤氏貴著)」を参考に書かせてもらっています。とても良い本なのでこのエチ先生に興味を持った方はご一読ください。
また「銀の匙(中勘助著)」もとても良質な作品です。こちらも自身を持ってオススメします。
※マンガでも銀の匙という名前の作品があるようですね。読んだことはないので中身はわかりませんが・・・

思い立ったときが興味を持った時。それを大切にしてみましょう。
ではまた

 

 

showma

健康に楽しく暮らしていきたい。子供たちに明るい未来を用意しておきたい。そんな気持ちが親を動かします