多くの人が感じているように、日々、格差は拡大しています。
富める者はより肥え、持たざる者はさらに困窮していっています。
金・地位のある人はそれを守るために法律という名のルールを作ったり、金融というシステムを造り上げたり、あるいは宗教という名の道徳を押し付けてくるわけですから、このような格差のある社会ができるのはある意味当然とも言えます。
それに加え、今後はAIが社会に本格的に入り込んできます。
人々の職が減っていくのは間違いがないでしょうし、食べていくのもどうなってしまうのでしょう?
その救世主として注目されるのが「ベーシックインカム」です。
このベーシックインカムの可能性について見ていきます。
ベーシックインカムとは何かをまず確認しておきます。
ベーシックインカム、日本語でいえば「定期的給付金支給」とでもなるかと思います。
要するに政府が定期的に国民に対して、一定額を無条件で支給するという制度のことです。
例えば毎月全国民に10万円ずつ支給したりすることです。
※対象は基本的に世帯ではなく国民全員
ベーシックインカムは補助金や生活保護などと違い、所得の違いや雇用状態などには関係なく全国民に支払われます。まったくもって平等なわけです。
冒頭にも書いたようにAIの発達により今後人間の仕事が奪われていくのは間違いがありません(新しい仕事が増える可能性もありますが、それはしばらく先になるでしょう)。
これは逆に言えば、働かなくても良いという状況かもしれません。
ともあれ、そうなった際に気になるのは、今のような仕事での定期的な収入はなくなってしまうということです。
こういう社会になれば、ベーシックインカムというのは決して夢物語の話ではなくなります。
※実際に無くなりそうな職業・残りそうな職業は⇒こちら
そのため、世界でも複数の国でベーシックインカムの実験が行われています。
EUでも何年も前から導入が検討されており、
ドイツでは120人に対して毎月1200ユーロ(日本円にして約15万円)を3年間支給するという社会実験が行われています。
これと支給を受けない1380人と比較し、様々な角度から判断をするそうです。
ちなみに、この120名という枠には約200万人の応募があったそうです・・・・
なお、上記以外でもベーシックインカムの社会実験は行われています。
アメリカのアラスカ州やナミビア、オランダ、カナダなどでも行っています。
また、スイスでもその計画は持ち上がっており、全世界的な課題になっていると言えます。
ベーシックインカムの問題点はなんでしょう?
大きく次の2つに集約されます。
①毎月の収入が確保されることによる労働意欲の減退
②ベーシックインカムのための財源の確保
①労働意欲について
労働意欲に関しては、実はアメリカのカリフォルニア州ストックトン市での社会実験において次のような結果が出ています。
無作為で抽出した125人のベーシックインカム受給者(24ヶ月の間、月500ドル支給)は、フルタイムの雇用者が12%増えました。
支給を受けていない人たちは同じ時期に5%の増加にとどまっていますので、ベーシックインカムを貰っている方が労働意欲は増える、ということが結果として出たのです。
⇒ベーシックインカムで労働意欲増加(東洋経済)
同様に、フィンランドで行われた社会実験(失業者2000人に対して月額560ユーロ支給)では、支給された人のストレスの低下、健康問題改善、集中力の改善が見られたという報告がされています。雇用に関しては、不支給者との差は見られなかったそうです。
この社会実験から、ベーシックインカムによって
勤労意欲が減退するということは見られませんでした。
それどころか、労働意欲の増加のみならず健康増進や集中力のアップまで見られたのですから、
「ベーシックインカム=働く意欲がなくなる」
という図式は成り立たないことが解ります。
それどころか、ベーシックインカムは労働に良い影響を与える、とする主張もあります。
例えば、美術や考古学などは経済的活動とはあまり関係がありません(芸術も商売になっていますがそれらの多くはただの投資)。
これら美術や考古学などの経済とは融和しない職業は、お金にしにくいだけであって、人類の発展には貢献できますし、そういったものに興味を持つ人も必ずいます。
そう言った人たちが、お金のせいでその夢や興味を我慢する必要がなくなる可能性があります。
自分の好きな事、興味のあることを思いっきり出来る社会になるかもしれないのです。
これはベーシックインカムの大きな利点だと考えられます。
さて、ベーシックインカム最大の問題点といえば「財源」でしょう。
日本の人口が約1億2千万人で、国民一人当たりに10万円を支給しようとすれば毎月12兆円。年間で約150兆円もの財源が必要になります。
日本の国家予算が毎年だいたい100兆円くらいなので、その1.5倍が(ベーシックインカムだけで)いることになります。
これだけ見ても、反対論者がいうように不可能である、という風に取られるかもしれません。
2017年に希望の党(当時)がベーシックインカム案を挙げたことがあります。
その際の内容は
月額5万円支給して、
財源として社会保障費(医療費除く)を充てる・・・年金保険料や健康保険料などで充当するというものでした。
ただこれはこれまで掛け金を支払ってきた人は単純に損をしますし、集めた際の目的とは違う支出になりますので難色を示す人の方が多いかもしれませんね。正直、現実的とは言い難い政策案だったと言えるでしょう。
2020年にはかの有名な売国政策者・竹中平蔵氏もベーシックインカムを提案しています。
竹中氏は、ベーシックインカムに際してマイナンバーと紐付けし(この時点で怪しい!)、さらに財源として年金と生活保護を廃止するというものでした。
おそらくこれは国民全員にマイナンバーを持たせたいだけで、ベーシックインカム自体はどうでもよかったのかも知れませんね。
実際、年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)の運用資産額は170兆円~180兆円くらい。
毎月10万円支給だと約1年、5万円の支給でも2~3年程で破綻する計算になります。
相変わらず売国一色の御方です。
このようにベーシックインカムは、
マイナンバーを国民全員に広めるための道具とされそうになったり、
選挙での票集めの一環として提案されたにすぎません。
現実的には難しいのでしょうか・・・?
しかし、これらを踏まえてもベーシックインカムは可能だ、と主張する人もいます。
それがヤニス・バルファキス氏(経済学者)であったり、苫米地英人氏であったりします。
彼らの主張は似ている部分もあるので、まとめてご紹介します。
それは通貨発行権を利用する、というものです。
通貨発行権とは、国の政府などが国の通貨を造る権利のこと。
つまり、何もない所からお金を生み出す権利のことです。
彼らはごくごく簡単に言ってしまえば、
大量にお金を発行して、それを配ればいい、と言っているのです。
あまりに簡単にまとめてしまっているので乱暴に聞こえるでしょうが、
それぞれの著書の中では具体的にそれを説明してくれています。
⇒ヤニス・バルファキス著 「資本主義が倒れた後のもう1つの世界」
⇒苫米地英人著 「デジタルベーシックインカムで日本は無税国家になる」
どちらも解りやすく書かれていますので必読の書です。
詳細は両本をお読みいただきたいのですが、
少しだけ紹介しますと、
①通貨発行権を利用し、お金を創造する
②それを使い、国民に支給=ベーシックインカム
③支給する通貨はデジタルでしかも1年で価値が半減する機能を付ける
④価値が減った分は自動的に国庫に入るものとする
といった内容です。
1年で価値が半減する、というのはそのままの意味で
例えば6月に10万円支給されたものが、
月日を追うごとに
⇒9万8000円
⇒9万5000円
⇒9万円
⇒8万5000円・・・・
などと使える額が減っていき、1年放置しておくと5万円になってしまうというものです。
(減った分が税金代わりに国の収入になる)
こうすれば、ほとんどの人はお金を消費して、経済も回り活性化する、ということです。
このように簡単に説明しただけでも、その有効性が感じられるのではないでしょうか?
少し経済に詳しい人だと、
そんなことをすればハイパーインフレになってしまう!
というかもしれません。
しかし、そちらについても著作の中では当然書かれています。
ぜひ、ご確認してみてください。
上記のように、ベーシックインカムはどうやら効果のありそうな政策です。
本来、経済とは人々が助け合うために存在するシステムのはずです。
しかし、現在の社会では動物のような弱肉強食を助長し、ルールを破っても人を陥れても、人の心を失っても、金を持っているものが偉いという風潮になってしまっています。
それらを少しでも是正するために、
このベーシックインカムという方法も考えて見る必要があるのではないでしょうか?
もちろん、正しい方向の知識を持っていなければ、
良心無き政治家が語るような偽ベーシックインカムに騙されてしまいます。
それぞれが未来のために知識と知恵と道徳を持って進んで行けるよう、頑張っていきたいものですね
ヤニス・バルファキス著 「資本主義が倒れた後のもう1つの世界」
苫米地英人著 「デジタルベーシックインカムで日本は無税国家になる」