コロナに有効である・・・という噂がまことしやかに流れ、特にマスコミや政府のことを信じられない人達(私のことです(笑))の中では人気を得ています。
日本ではコロナに対して「適応外使用」になってしまい、イベルメクチン(上の写真は商品名:ストロメクトール)を使用して副作用などがあった場合、原則として国の救済制度の対象にはなりません。
そのため、現在は代理業者経由での購入や個人輸入が盛んに行われているようです。
しかし、アメリカ食品医薬品局(FDA)では、効果が証明されていないし副作用もある、ということで注意喚起されてもいます。
果たして何が真実なのか?
調べてみました
イベルメクチンは、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智博士が発見した”アベルメクチン”を元にした化合物のことです。
元々は動物などに対する寄生虫の駆除薬として使われていました。
動物抗生剤として非常に有効であることが解っており、20年にもわたって当該医薬品市場のトップであり続けるという記録的な売れ行きを残しています。
大型動物に効果があるのだから、人間にも使えだろう・・・ということで、大村博士とメルク社のキャンベル博士との合同研究により、当時アフリカなどで問題になっていたオルコセンカ症(ブヨなどを媒介としてミクロフィラリアという寄生虫が起こす症状)に対する薬を開発した。
結果としてオルコセンカ症は大幅に減少し、副作用も他の薬と比較して少なかったため、大村教授とキャンベル博士は評価され、ノーベル賞を受賞するに至りました。
そしてこの度、テレビなどで長尾クリニックの長尾医師がイベルメクチンの有効性を発言したことで話題になりました。
現在(2021年8月末)では、長尾クリニックではイベルメクチンの在庫はなくなり、冒頭の通り日本ではコロナに適用外なので(普通の医師は処方箋を書きたがらない)、個人輸入などが行われているようです。
さて、では肝心のコロナに対しての効果はどうなのでしょう?
まずは効果があると言われている理由を探してみましょう
✅前述の長尾医師がコロナ患者に対してイベルメクチンを数百例処方した。死亡例は0名。初期に投薬・治療することでかなり重症化を防ぐことが出来ると発言。
✅北里大学では6月よりイベルメクチンの臨床試験を始めている(効果が期待できるため)
✅2020年4月、シカゴにあるデータ分析会社「サージスフィア」がイベルメクチンが新型コロナの死亡率を低下させたことを示唆するデータを公表
✅更にサージスフィア社は、150件以上の病院でイベルメクチンで治療された患者704人のデータを出し、人工呼吸器の必要性を65%削減、死亡率を83%削減したと発表した。
✅また、サージスフィア社のデータを元に、3人の医師が有名な医学雑誌『ランセット』と『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に論文を発表。これもイベルメクチンの有効性が書かれていた。
✅新型コロナに関する医師連盟であるFLCCC(Front Line COVID-19 Critical Care Alliance)が、新型コロナウイルスの複製を阻害し、大きな効果をもたらすと公表した
✅東京都医師会も使用許可をすることに前向き(東京都医師会会長がイベルメクチンを配布していた国とやらなかった国で大きな開きが出ていると主張)のようであるこれらの事が理由となり、イベルメクチンがコロナに有効であると言われている
では、反対に、「効果はない」・「むやみに使うな」という理由を見てみましょう
✅アメリカ食品医薬品局(FDA)は、まだ研究の初期段階で危険である。過剰摂取は最悪の場合死を招く、と警告
✅イベルメクチンにも副作用がある。肝機能障害や皮膚・粘膜の障害、また血小板の減少などが報告されている
✅元々は家畜やペットのための薬である
✅アメリカの権威ある学術誌JAMAに、「COVID-19の治療にイベルメクチンを投与しても効果はない」とする臨床試験結果が掲載された(コロンビアの研究者による)。
✅米国立衛生研究所(NIH)も効果については科学的検証は不十分である、としているこれらのことが中心となり、むやみに服用するな、というのである。
さあ、比較してみていかがでしょう?
あなたは使いますか?
それとも使いませんか・・・?
双方の意見・主張を総合的に考えてみる必要がある。
どちらも非常に合理的な反論が成立してしまうのだ。
まずは「有効派」への反論から
そもそもコロナは軽症者も多い病気であった。長尾医師も言う通り、指定感染症5類(もっとも驚異の低い指定)にするべきだという意見もあるくらいだ。そこからして、元々大した病気ではなかったものに対して、イベルメクチンがどのくらい効果があるかは非常に不確定的である。
また、サージスフィア社のデータは捏造である可能性が非常に高いと言われている。実際、サージスフィア社のデータを元にした論文は次々と取り下げられている。
また東京都医師会会長が言う、イベルメクチンを配布した国=タンザニアでは1年以上も新型コロナの感染者も死者も出ていない、という発言も情報が足りません。
タンザニアではジョン・マグフリ大統領(当時)が、コロナ騒動やPCR検査を拒否。ワクチンも有害だと切り捨て、コロナに関するデータはほぼ無い(つまり感染者も死者もゼロ)状況なのです。
こう考えると、信用できそうなデータはとても少なくなります。
次に、「現状では危険派」への反論
FDAは研究の初期段階で危険である、と言っていますが、現在世界中で打ちまくっているワクチンは治験中です。全く説得力がありません。
副作用に関しても同様。mRNAワクチンの方が圧倒的に危険でしょう。
科学誌JAMAに掲載された「効果無し」という点も、批判する学者もおり、実際に研究者100名以上がJAMAに対して抗議文を送っています。
また、売りたいのはイベルメクチンではなく、もっと儲かるワクチンや抗体カクテル薬だから、という話もあります。資本主義下では当然のことと言えるかもしれません。
イベルメクチンはすでに特許が切れており、ジェネリック医薬品(ほぼ同様の成分で安価で製造したもの)も出ています。製薬会社としては旨味が少ないのです。
以上のことを踏まえ、以下は個人的な考えになります。
結論から書けば、イベルメクチンに過度な期待は必要ありません。
まず、市販されている薬で特効薬たり得るものは考えられません。多少効果はあるのかもしれませんが、薬の副作用や添加物を考えれば差し引きゼロ(あるいはマイナス)と言えます。
正直、コロナ特効薬として一時期騒がれたアビガンと状況が被ります。
また、タンザニアなどのデータを基に研究を開始してしまった北里大学も、一度舵を切ってしまったからには止まれません。騒ぎが治まるまでは、有効なデータを作り続けなくてはいけません。これも、詐欺に近いips細胞に状況が似ています。
長尾医師の効果を実証した、というのもあくまで一医師の感想であり、先ほども言ったように、本当にどのくらい効果があったのかは未知数です。
長尾医師が悪い医師だとは決して思いません。むしろ真面目な医者で、良心がある医者でしょう。しかし、何か先進的で本質的なことに取り組んでいる方であるようは感じられません。
それと、製薬会社は旨味の大きいワクチンや抗体カクテルを売りたい、というのは事実でしょう。それが資本主義です。儲けが最優先ですから。
まとめると、
効果に関しては根拠が薄弱。
陰謀論者が好きな”政府や医師会が拒否している薬だから本当は聞くはず”、というのも論理の飛躍(ただし資本主義の原理から拒否している理由は理解できる)。
もともと、現代の(一般的な)薬は、石油が原料であり決して本質的に体を良くするものではないこと
これらを勘案して、イベルメクチンに期待するな、です。
ただ、ガンの治療として犬などの虫下しとしてフェンベンダゾールというものがあります。当ブログのアーカイブで癌の治療薬として紹介しましたが、そういった実例もあるので可能性は残されているかもしれません。しかし、それがあれば必ず効果がある、といったものではないことは覚えておきたいですね。
以上はあくまで私個人の考察です。
いつも言っていますが、最終的には自分で考えて結論を出してください。
そのための1つの情報となれば幸いです
【参考】
ストロメクトール取扱説明書(PDF)